千葉県市川市行徳地区。
この街は都心までほど近いベッドタウンで、臨海部は工場や倉庫が立ち並ぶ工業地帯である一方、多くの寺社が残り「神輿のまち」として知られている。
3年に一度、五ヶ町例大祭が開催され、人々は五穀豊穣を祝い5つの町を神輿を担いで練り歩く。収穫祭として始まったこの祭りは、かつて農民コミュニティの合意形成のために重要な役割を果たしていた。しかし、田畑がなくなり都市部となり、コミュニティが多様化した現代ではその役割も薄れてきている。祭りは各町の自治会を中心に運営されるが、自治会に参加しない住民も増え、子どもたちの数も減り、神輿の担ぎ手不足は年々深刻化している。
それでも人々は祭りを開催し続ける。神社に仕える古老、古くからの住民、ベッドタウンを求めてきた新住民など様々な人々が共に暮らし、祭りに向けて準備を進める。
すでに都市となったこの街で、神輿は共同体の形成と分断、そして人々の信仰にどのように影響しているのだろうか。
監督:上野貴弘
1989年愛知県生まれ。映像作家。名古屋工業大学建築・デザイン工学科卒業。読売テレビ放送でアートディレクターを務めた後、スコットランドのエディンバラ大学大学院を修了(MFA in Film Directing)。RAM Association: Research for Arts and Media-projectインターン。主な作品に『Letters from Prison』 (2019)、『不知八幡森』(2021)など。
(40min)